「どうしても泣き止んでくれない」
「言ってわかるわけではないけれど、いうことを聞いてくれなくて…」
誰が悪いわけでもないけれど、あらゆるストレスが蓄積され爆発した結果、つい怒鳴ってしまった。そんな経験がある方は少なくないのではないでしょうか。
怒鳴ることは、体罰よりマシだと思いますか?
怒鳴ることは赤ちゃんの心に、脳に、深い傷が残ると言われており、成人になってからの適応障害や、人格障害の原因になると考えられています。
危険性を十分に理解した上で、それらを理性に、赤ちゃんと向き合っていきましょう。
怒鳴ることで、あなた自身がストレス解消になってしまっているならば、それは慢性的に、継続的に行ってしまう可能性は十分にあります。
最近は「虐待」の定義も変化しています。
「ついやってしまう」ことは、リスクをきちんと把握していれば、コントロールすることはできます。
怒りのマネジメントの仕方も、親の責務として。本文をどうぞ最後までご覧ください。
怒鳴られた赤ちゃんの影響を把握しよう。リスク回避の第一歩
「赤ちゃんは理解してくれない」故に怒鳴ってしまう、あるいは「理解できない」ためにそうなってしまう、と思っているならば、訂正しなくてはいけません。
赤ちゃんはあなたの言葉の意味自体は理解できませんが、感じることはできるということです。
言葉や音、色や形で構成された世界は、私たちが世界を処理しやすいように、理解しやすいように加工されていると言えるでしょう。
けれど赤ちゃんはそれらのフィルターを通じて世界を捉えることはできません。
赤ちゃんは身体中の神経を鋭敏にさせ、気配を知覚しているのです。
怒鳴るということは、あなたの感情を加工せずに、そのままぶつけている行為です。
私たちも怒鳴られれば、身を竦め、身体を硬直させて驚き慄きますよね。
赤ちゃんが怒りのパワーを受け止めたとき、私たちの予想を遥かに超える衝撃を受けています。
子どもに直接的虐待を与えていなくても、虐待を目の当たりにすると子どもの脳の様々なところが萎縮していたり、機能低下が見られることが確認されています。
赤ちゃんの繊細な脳への影響は、尚更だと考えられますね。
では、赤ちゃんが怒鳴られると具体的にどのような影響があるか、見ていきましょう。
思考停止・自尊心・自己肯定感の低下
怒鳴るということは、威嚇と同じだと考えられます。
庇護されることでしか生き延び流ことができない赤ちゃんが威嚇を受けた場合、相手をそれ以上刺激しないことでしか生存戦略は成り立ちません。
それ故、相手の言うがままになってしまう傾向にあるようです。
感情コントロールができない
たとえ怒鳴られても、赤ちゃんはスポンジのような存在です。
相手のことを模倣しますし、獲得した全てを駆使して生き延びようとします。
もしあなたが怒鳴れば、怒鳴ることが「普通」のコミュニケーション手段と理解するでしょう。
愛着障害
赤ちゃんは、基本的信頼関係を幼児期のうちに備え、社会への適応力を養います。しかし、怒鳴ることでそれらができなくなる可能性も十分にありえます。恐怖で本心を吐露できない状況に陥るのです。
愛着形成をうまくできないと、特定の養育者だけでなく、日常的に関わる人にも信頼関係を築くことは難しくなります。
自律神経失調症、うつ、心身症
これらはどれも心から始まり、身体の不調をもたらします。
個人差が大きいものですが、心の恐怖や不安は、上記の三つの他にも現代社会の深刻な病として成長する恐れがあるということです。
身体に不調をきたすので、心に問題があると発見されにくいです。
これらの影響というのは、一朝一夕で現れるものではなく、成長してから、思春期、あるいは成人してから顕著に現れます。
『赤ちゃんだから』は全く当てにならない言い訳です。
より繊細で敏感な赤ちゃんの心には、生涯消えることのない傷が簡単に刻まれてしまうのです。
児童心理学者のハイム・ギノットは『子どもの心は固まる前のセメントみたいなもの』と述べています。
何か落とせば必ず跡が残ります。
現代日本は子どもに寛容とは言い難い社会です。失敗を許さず、「もし失敗したら排除されるのではないか?」という緊張と常に隣り合わせの状態なのかもしれません。
それらが赤ちゃんの時にできた心や脳の傷に、塩を塗り込んでいるのかも。
驚くかもしれませんが、これらの特徴は、被虐待や非行、不登校、発達上に困難のある子どもたちの特徴にも当てはまるのです。
赤ちゃんに怒鳴らないように、怒りのマネジメントをやってみよう
「赤ちゃんへのリスクは重々承知している」
「でも、つい怒鳴ってしまうことを自制できない」
このように自己嫌悪に陥ってしまい、産後鬱になってしまう方も少なくありません。
ですが、自分をそう追い詰めないでください。
イライラが止まらないのは、決してあなただけの責任ではありません。
子育てというのは、1人で行うものではありませんし、ワンオペ状態になってしまっているならば、それは周囲の責任もあります。
怒りのマネジメントは、そう難しいものではないですが、すぐに身になるものでもありません。
自分の状態と周囲の環境をよく観察しながら、できること、できないことを考えていきましょう。
自己嫌悪を助長するわけではありませんが、怒鳴ることを「叱責」と正当化を図る人より、赤ちゃんに対して真摯に向き合っていますよ!
ホルモンと環境の葛藤がイライラを生む
怒鳴るエネルギーはどうしようもない怒りやイライラから生まれるものですが、これらはどこから来るのでしょうか。
現代日本において、これらの原因は二つあると考えられています。
一つは、妊娠、出産後に変化するホルモン量、二つ目は、子育て環境です。
ここで言うホルモンとは、女性ホルモンの一つで【エストロゲン】というものです。妊娠中はこのホルモンが大量に分泌されます。
様々なサプリメントにも最近よく含まれていると叫ばれますが、これらがあることで肌や髪質の改善や、不眠症や情緒不安定性、鬱やアルツハイマーなど多様な病気を防ぐと言われています。
この素晴らしいホルモンが、産後は激減するため、不安や孤独をより感じやすくなってしまうのです。
人間は社会的動物です。孤独を感じれば群れようとしますよね。子育ても集団で行えるようにそう進化したのかもしれません。
しかし、現代日本の社会では【ワンオペ】は恒常化しているのが現状です。
我が家の子育てはまさにこれ!という感じでした。
パートナーは多忙で、朝から晩までいない人で、長女は人見知りを発動したほどです。つまり、パートナーからの援助は全く期待できない状況でした。
身体は助けを求めているのに、助けを求められないのです。だから怒鳴ってしまい、反省をする。けれど抜本的に解決していないのでまた繰り返し。
怒鳴ることによって、赤ちゃんだけでなく、親自身も追い詰められるという負のスパイラルが発生したわけです。
日本の子育て環境は、ジェンダーギャップ指数からも見て取れるように、決して良いものとは言えません。
多くのかたが、ワンオペになりがちで、孤独とストレスを抱えています。
ですから、あなたが怒鳴ってしまうのはそのようなギャップ、ままならないことに対してのストレスから生まれていると言えるかもしれません。
怒りマネジメントに取り組む前に、どれくらい今の子育て環境を改善できるか見直してみましょう。
誰かに助けを求められるかが重要です。パートナーに限らず、電話相談口やオンラインで相談、市の窓口に行ってみるなど自分にあった補助を探しましょう。
親学や助産師会といったものが最近よく話題に上がっていますね。
そしてパートナーは補助ではありません。同じ子育て責任者として認識しましょう。
環境整備をしたら、自分を見直し
怒らないためには……とセルフマネジメントの本はいくつも出版されていますね。その中から自分にあったものを見つけられたらいいですね。
しかし「怒りを感じたら6秒我慢」というような瞬発的なものはなかなか難しいと思います。自制かける前に導火線にすでに火がついているので。
怒鳴ることがすでにルーティン化されているならば、それらを生かしてみるのも手です。
これは私が実践していたあくまで一つの例ですが、【自分が赤ちゃんに怒鳴ってしまったとき、それはどういう状況だったか?】という問いを自分にぶつけてみましょう。
答えが【赤ちゃんが泣き止んできれないから】になってしまいましたか?
そうではなく、
赤ちゃんが泣き止んでくれないから、『睡眠時間が削られた』『仕事ができない』『料理が作れない』『近隣からのクレームがある』などなど、いろいろありますよね。
問題が発生してしまえば、それらに対して頭を巡らせ、時間と労力をあなたから奪っていきます。
これらの問題を放置すれば、あなたの中で赤ちゃんが泣くこと自体が苦痛というふうに置き換わってしまいます。
けれど重々承知でしょう、赤ちゃんは泣くものです。
もしあなたからそんなピリピリしたものを発せられたら、赤ちゃんは即座に気付きます。
問いに対する答えを見つけられたら、代案を準備してみましょう。
Aが起きたら、Bをする。またはCをする、というように。
我が家でよく活躍した代案は缶詰と蒸しタオルです。
料理とお風呂って結構時間が食われるんですよね。姉弟もいたので。
他のことで時間が削られたら、料理とお風呂はその分削ろう、と言う形でした。
開けて、温めればすぐですし、蒸しタオルも電子レンジですぐ作れますから……。
連日続かないように工夫は必要ですが、その場を乗り切ればどうにか……。
罪悪感を抱きすぎないことが代案をする上で重要です!
今までなら、何か起きてしまったら、それに対するアクションを待つことが多かったかもしれません。
代案法はアクションを起こすものです。
例えば、「赤ちゃんが夜通し泣き、近隣に迷惑をかけてしまったら」→「お手紙を書いてみる」といった感じです。
〈夜泣きがひどく、皆様に対してご迷惑をおかけしています。皆様が寛大に接してくださるので、とても助かっています〉
こんなことを言われると、ちょっと文句が言いにくいですよね。
誰かに対してだけではなく、自分に対しても代案を準備してあげましょう。
ご飯が作れなかったら、出前をとる。
睡眠時間が確保できなかったら、いつ昼寝をする。
週に1回は外注しているから、できなかったら、初めから手をつけない、など。
外注はお値段がかかるイメージもありますが、最近は「誰でもはじめられる」ということで徐々に市場も拡大しています。
自分1人で子育てを背負わずに、たくさんの助けと代案を確保してみてはいかがですか?
育児を理由にするな!と言われたことがあるかもしれませんが、育児は立派な理由です。
実際「疲れてできない」のではなく、「時間がなくてできない」ことの方が多いですよね。
文句を言うパートナーがいたら、じっくり協定を結ぶのもいいかもしれませんね。
専業主婦が当たり前の時代に言われた「手抜き」の呪縛から解放されましょう!
まとめ
本稿のまとめは以下のとおりです☆
- 赤ちゃんに怒鳴ることは、生涯の傷をつけてしまう危険性がある
- 怒鳴ることと叱責は違う。怒鳴ることは威圧すること。
- 怒鳴る原因は、ホルモンと環境のギャップ。
- 環境改善をしてみよう。
- その上で、セルフマネジメントをしてみよう。
- 代案でゆとりを持って、イライラを落ち着かせてみよう。
私たちは身近な問題の要因を、自分に還元してしまうことがよくあります。それは我が子なら尚更。
しかし、そうではないかもしれないよ?ということを、本稿を通じて感じていただけたら幸いです。
同じような苦しみを抱いている人はたくさんいます。
それをまとめた豪田トモ監督の『ママをやめてもいいですか?』http://www.umareru.jp/mamayame/ という映画があるように、あなたに共感し、あなたに手を差し出してくれるツールは、もっとたくさんありますよ!
最後まで読んでくださってありがとうございました。