子供が幼稚園などに入ると、色々な遊びを経験して帰ってきます。わが子が園に通い始めた時、驚いたのは、土砂降りの雨が降った後の「泥遊び」です。
子供が喜ぶことは想像できるけれど、泥遊びが終わった後、体を洗ったり、洗濯したりと大変そう!わざわざ大変な泥遊びをやるのはどうして?と思っていました。
泥遊びを始めとする「感触遊び」では、「感触を楽しむ」というねらいがあります。さらに、感触遊びを通して子供にとって大切な力が育ちます。園で先生が「泥遊び」を取り入れている理由もそこにあるようです。
ちなみに「感触遊び」とは、五感(視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚)を使った遊びのことです。先ほどの「泥」を作る土、水、落ち葉などの自然、片栗粉や寒天などの食べ物、新聞紙、楽器など、身の回りにある様々なものが遊びの材料になります。
感触遊びが子供に良いことは分かっているが、「準備が大変」「汚れる」などというイメージから躊躇してしまう、という方もいるかもしれません。
ここでは、感触遊びのねらいや、感触遊びでどういう力が育つのか、ということについてお話します。また、家でも気軽に出来る感触遊びをご紹介します。この記事を参考に、親子で感触遊びを楽しんでいただけたら幸いです。
感触遊びのねらいとは?
お子さんは、お風呂で水遊びをするのは好きですか?わが家では、体についた泡がシャボン玉のように膨らんだのを見て喜んだり、お湯や泡を混ぜてお料理をしたり。目をキラキラさせて夢中になっているので、微笑ましく見ていると、いつまでも終わらなかったりします。
感触遊びのねらいを調べてみると、「五感を使って素材の感触を楽しむ」「素材の変化を楽しむ」などとあります。お風呂での水遊びを見ていると、水の「冷たい」「熱い」といった感覚や、蛇口のひねり方によって、激しい雨のように「ジャー」と出たり、チョロチョロと出る、といった発見を楽しんでいることが分かります。
では、感触遊びを楽しむことによって、どんな成長が見られるのでしょうか。調べてみると、集中力、思考力、表現力、想像力、危険察知力、忍耐力などが育つそうです。遊びを楽しみながら、これだけの力が育つと知って、驚きました。
たしかに、先ほどの《泥遊び》では、初めて泥に触れてみる勇気、夢中になって泥で遊ぶ時の「集中力」、イメージを泥で形づくったり、人に言葉で伝えたりする「表現力」、思うように形が作れなくても試行錯誤する時には「忍耐力」が必要になってくるでしょう。
お風呂での水遊びで考えると、わが子は台所からビニール袋を持ってきてお湯を入れてみたり、船を作って浮かべてみたりしていましたが、「なぜ、こうなるのだろう」「こうしたら、こうなるかもしれない」など「思考力」や「想像力」を働かせていると感じます。
また、シャワーが「熱い!」と感じたら、これ以上熱くすればいけないと分かり、「危険察知力」が育つと言えるでしょう。
そして、これらのどの力も、子供が自立をして一人で生きていくうえで、大切なことだと感じられます。
このように「感触遊び」を通して、子供は多くのことを学んでいるようです。
いざ子供に「思考力」を身に付けさせようと思えば、何か難しく考えてしまいますが、こういった遊びを通して、子供は自分で学ぶ力を持っているのだと気付かされます。
次に、家でも簡単に出来る感触遊びをご紹介します。
片栗粉あそび
手で握ると固まり、手を広げるとトロっとした液体になる所が、不思議な片栗粉。子供達の興味を惹きつけます。
作り方はとても簡単!片栗粉と水を2:1の割合で混ぜるだけ。
こちらの動画は、直接触れない子の遊び方なども参考になります。
保育園の参観日に、親子で片栗粉あそびをしたことがあります。
水と片栗粉の入った容器を前に、わが子は恐る恐るスプーンでつついたり、すくったりしていました。同じグループの子は、容器に手を突っ込み、その感触の変化に夢中になって、握る、離すをひたすら繰り返していました。
子供の反応は様々です。お子さまも感触遊びにより、普段の生活では見ることのない、意外な一面を見せてくれるかもしれません。
この遊びのねらいは、何と言っても、固まったり、トロっとしたりといった感触の変化を楽しむところではないでしょうか。
子供は片栗粉を握る手や指の力加減を変えたりして、固まっている状態を保とうとするかもしれません。こうやったらどうなるのかな、と思いながら、色々試してみることでしょう。
そのため、想像力や集中力、思考力が育まれるのではないかと思います。また、感触遊びは指先を使うことから、育脳にもつながると言われます。
先にも述べましたが、子供によって反応は様々です。まずは親がやってみせて、嫌がる子供には、無理に触らせたりせず、スプーンなどを用意したり、色を付けてあげると楽しめるようです。園では恐る恐るだったわが子も、お友達を見てやりたくなったのか、帰宅後、片栗粉に水を混ぜて自分から手を入れていました。
園では、水を混ぜた片栗粉を、たこ焼き器で焼いてもらうコーナーが人気でした。親も「どうなるんだろう!」と子供の感覚に戻って楽しむことができ、それも感触遊びの魅力だと思います。
寒天あそび
ゼラチンのようにプルンプルンというより、ほろっと崩れる寒天。片栗粉あそびと並んで、感触遊びとして良く取り上げられています。寒天は常温でも固まり、固まった後も常温で溶けないので扱いやすいです。
感触遊びを家でやる際、準備が大変そうなイメージがあり、躊躇してしまうことがあります。わが家では、子供とのお昼ご飯の前のちょっとした時間、寒天あそびの準備をしました。
やってみると、準備も後片付けも、思ったほど大変ではありませんでした。また、一度簡単に出来ると、今日もやってみようか、という気持になります。
<作り方>
分量の水を鍋に入れ、粉寒天を振り入れて約2分沸騰させます。溶けたら火を止め、お好きな容器に流し入れます。固まる前に、好きな色の絵の具(食紅でも)を入れて混ぜます。大体1~2時間ほどで固まるようです。
わが家では、絵の具を入れて混ぜる所を子供にやってもらいました。2つの容器に1色ずつ別の色で作ったのですが、常温でも固まるため、そのまま机の上に置いておきました。
「固まったかな?」と作ったばかりの寒天を子供が触ると、表面だけはもう固まっていました。子供が「固まったよ!」と言って2色の寒天を一つの容器に合わせて混ぜ始めてしまいました。
結果的には、それでも大丈夫で、その後、きちんと固まり、混ぜた所がマーブル模様のようになっていました。固まった寒天は、粘土遊び用の型抜きやへらを使って、自由に遊ばせました。わが子は寒天あそびを楽しむと、次は「粘土遊びがしたい!」と粘土を出し始めました。
寒天あそびから粘土遊びへと広がり、子供の「創造力」や「想像力」を感じました。ちょっと目を離していたら、粘土と切り刻んだ寒天を混ぜたようで、床に散らかってしまいました。あらかじめ、広めのシートを敷くと良いと思います。
このように、寒天あそびも片栗粉あそびと同じように、家庭で気軽に楽しむことが出来ます。
反省点としては、固まるまで時間がかかることを事前に子供に説明したり、シートを敷いておく必要があったということ。また、わが家では寒天あそびから粘土遊びに発展しましたが、続きの遊びを用意してあげるのも長い時間遊べて良いかもしれません。
余った粉寒天は、お料理に。牛乳寒天など、簡単に作れるようですので、子供と一緒におやつ作りも良いですね。
生活の中の感触あそび
生活の中にも感触遊びに通じる出来事があると感じます。たとえば子供とお散歩している時、次のようなことは良くありませんか?
「雨の中、水たまりに足を突っ込む」
「地面に見つけた虫、石など、思わず手を伸ばして拾おうとする」
急いでいる時は「触らないで。早く行くよ」などと止めることもありますが、そうでなければ、子供はどんどん遊びに夢中になっていきますよね。最初は恐る恐る入っていた水たまりの中で、ジャンプしたり、足踏みしたり。色々な石を見つけ、手にいっぱい集めたり。
お散歩の途中で出会う自然は、子供にとって魅力的な感触遊びの素材になります。春の草花、梅雨時の雨、夏の虫たち、秋の落ち葉や木の実、冬の雪など、感触遊びを通して季節を感じることもできます。
さらに、拾ってきた石に絵を描いたり、積んでみたり、かちかちと合わせてみたりと、想像力をふくらませ、お家でも色々な遊び方ができるのではないでしょうか。
また、お料理で食材を触ることもまた、感触遊びに通じるものがあると感じます。
小さい子供なら、海苔をビリビリ破いて、ごはんに載せたり、レタスをちぎってサラダにしたり。それだけでも、自分の手で作れたという喜びがあります。
料理と言っても難しいものではありませんが、食材をちぎりながら「海苔は濡れると柔らかくなる」「レタスはシャキシャキしている」など、その素材の特徴をつかむことができるでしょう。素材のイメージをつかんだ経験は、初めての素材に出会った時にも役に立つそうです。
このように、日々の生活の中でも、感触遊びにつながる経験ができると思います。子供の「それ、やってみたい!」という声に、ぜひ耳を傾けてみてください。
感触遊びで気を付けること
気軽にできる感触遊びですが、注意点があります。
・片栗粉の処分について…片栗粉は流さない(排水溝に詰まることがあります)
・小さいお子さんは、誤飲のないように
・小麦粉、卵のパック、牛乳パック、ヨーグルト容器…アレルギーのお子さんは注意が必要
・自然に触れる時は、毒のある植物に気を付ける
また、親が感触遊びを用意した時、子供の興味によって、予想外の方向にいくこともあると思いますが、親の考えた流れになるように口を出したりすることは避けたいものです。
親は準備や必要な説明をしたら、あとは口を出さずに、子供がどのように遊ぶのか見守りましょう。子供が自分から発見したり考えたりすることが、結果として一番の学びになると思います。
ただ、ずっと無言で見守るのではなく、子供が触っている物について「固いね」などと言葉を添えたり、おままごとなら親も参加したりすると、まだ小さい子供もより楽しく遊ぶことができるようです。
まとめ
感触遊びのねらいや方法についてお伝えしてきましたが、いかがだったでしょうか。
感触遊びのねらいは、感触を楽しむことがメインです。また、遊びを通して得られるものは沢山あることが分かりました。集中力、思考力、表現力、想像力、危険察知力、忍耐力などです。
感触遊びである、片栗粉あそびや寒天あそびについても、わが家の経験を交え、お伝えしました。
二つのあそびのねらいは、感触の変化を楽しむこと。そして、集中力や思考力、表現力などの成長につながるものでした。
生活の中にも感触遊びが含まれていることをお伝えしました。季節によって変わる自然で遊ぶこと、また料理をすることには、五感で感じられる要素が沢山あると思います。
また、感触遊びの注意点をお伝えしました。アレルギーには特に気を付け、安全な環境を用意してあげてほしいと思います。また、子供が遊び始めたら、口出しはしないようにということでした。(ただし、コミュニケーションは大切)
感触遊びは、子供の素直な反応が感じられる遊びです。親も子供の頃の感覚を思い出しながら一緒に楽しめると思います。時間を気にせず、思う存分こういった遊びを楽しむことで、子供は心から満たされ、のびのびと成長していくことができるのではないかと感じます。