子供にしつけだと言って暴力を振るってはいけません。今の時代、それは当たり前の認識になっていると思います。しかし、手を出す代わりに怒鳴りつけていませんか?
殴るなどの行為が『身体的な暴力』だとしたら、怒鳴ることは『精神的な暴力』です。
どちらも同じくらい、子供の心に傷を与えることになります。
子供にとって特に恐怖を感じる『父親の怒鳴りつけるしつけ』が習慣化してしまった場合に、子供の心にどんな影響を与えるのでしょうか。
怒鳴られてしつけられた子は、どんなふうに育つ?
子供はしつけとして日常的に大人に怒鳴られていると、恐怖心から無意識に『怒鳴られないための行動』を選択するようになってしまいます。
その結果、以下のような悪影響が見られます。
・好奇心を無意識に抑え、気持ちや行動が消極的になる
・怒られることを恐れて嘘をつくようになる
・自己肯定感が低下する
・『自分の考え方』ではなく、『親の考え方』をもとに行動してしまう
・他者に対して攻撃的になることがある
・他者と信頼関係を築くことが難しくなる
常に人の顔色を伺いながら『怒られない』ことを何よりも優先した行動をとるようになり、自立性のない子供に育ってしまいます。そのような状況では自分の意思で何かに挑戦することは難しいですし、自分自身に劣等感を感じることも少なくありません。他者と本音で話すことを恐れ、人との関りが苦痛になることもあるでしょう。
その結果、引きこもりがちになったり精神病を患ったりするリスクがあります。
また、自分を守るために嘘をついたり、自分よりも弱い者に対して攻撃的になる可能性もあるでしょう。子供は幼少期の親とのコミュニケーションをもとに、親以外の人との関わり方を学んでいきます。怒鳴ることで子供の行動や気持ちをコントロールしていると、この先子供が築いていく人間関係に大きな悪影響が生じることは安易に想像できますね。
成長してもトラウマは残る?
トラウマとはいわゆる『心の傷』と言われるものです。
怒鳴られて過ごした経験が、子供の心に消すのは困難な傷として残ります。
トラウマが残ると、フラッシュバック(怒鳴られた時のことを何度も思い出してしまう)・過度の不安・極端な緊張・否定的思考・不眠・抗うつ・感情の麻痺など、身体にも心にも症状が現れることも。それらの症状が長く続き、日常生活に支障をきたすようになると、PTSD(心的外傷後ストレス障害)と診断され、長く子供を苦しめることがわかっています。
私自身も父親が短気な人だったため、過去に怒鳴られたときの事をよく思い出す、成人してからも人に注意されることを過剰に恐れる、男性が苦手、など怒鳴られたことによる影響に心当たりがありました。しかし現在は父親も以前と比べて温厚になったおかげで関係も良好になり、症状は緩和されたように感じます。時が解決してくれることもありますが、トラウマを完全に消し去るのはなかなか難しいものですね。
しつけで怒鳴るのをやめるためには?
子供に怒鳴ることが、どんなに恐ろしいことか分かったと思います。実際に『怒鳴るのをやめたい』『子供の父親に怒鳴ることをやめさせたい』場合、怒鳴ってしまう本人の意識の改善方法と、周囲のサポート方法を紹介したいと思います。
怒鳴りそうになったら、6秒間抑える
感情的な怒りは、脳の働きで6秒間待つと落ち着くと言われています。目を閉じて深呼吸したり、場所を移動したり、一度怒りから目を逸らしましょう。
子供と目線を合わせる
しゃがんで目線を合わせることで、子供は「パパ(ママ)は自分を話を聞いてくれようとしている」と感じます。子供の言い分を聞いたうえで、自分がどう思ったのか伝えましょう。
高い位置から威圧的に叱られると、子供は不必要に恐怖を感じるものです。
つい怒鳴ってしまったら…
自分の気持ちが落ち着いてから、子供の目線でしっかりと謝りましょう。親としては自分の過ちを認めるのは簡単なことではありませんが、親子の信頼関係を結ぶチャンスにもなります。私もつい3歳の息子に怒鳴ってしまうことがあるのですが、怒鳴ってしまったことを丁寧に謝ると、息子も私の気持ちに応えてくれます。
どんなに幼くても、子供は親の気持ちを汲み取ろうとしてくれているんだなぁと感じました。
今すぐしつけで怒鳴るのをやめさせたい場合は?
父親の怒鳴るしつけを近くで聞き、モヤモヤしてる方、何もできることはないでしょうか?家族のサポートで父親の怒鳴るしつけも早く解決することがあります。
どのようなサポートが考えられるかご紹介していきますね。
夫婦間で話し合い、しつけ方法を統一する
まずは父親自身が怒鳴りがちであることを自覚することが大切です。子供に怒鳴ることが後々どんな悪影響を及ぼすのか伝え、これからどんなふうに子供のしつけをしていくのか方針を話し合ってみましょう。
父親も同じように怒鳴られて育ち、それしか方法が分からない可能性もあります。
父親のストレスを緩和させる
夫に挨拶、感謝、労いの言葉を日常的にかけていますか?夫婦の会話の時間はきちんととれていますか?夫婦円満・笑顔の多い家庭は、家族のストレスが溜まりにくくなります。
父親が何かしらのストレスを子供にぶつけてしまっている可能性もありますので、母親が家庭内の和やかで明るい雰囲気を作るサポートをしていけると良いですね。
時にはカウンセリング・専門機関に相談を
父親自身が怒鳴り癖を自覚をしていてもやめることが難しい場合は、医療機関などでカウンセリングを受けることもひとつの方法です。
話し合いをしても聞く耳を持ってくれない場合など、時には父親と距離をおくことが必要になるケースもあるかもしれません。
まとめ
父親が怒鳴ることで子供に言うことを聞かせることは、子供の将来を考えると大変危険なことです。
子供の心が健全に育つことを妨害し、これから出会うであろう他者との円滑なコミュニケーションをとることを難しくさせてしまいます。
また、幼少期のトラウマとなってしまうと、心身ともに不調が現れ、日常生活に支障をきたすこともあります。
まずは夫婦で『怒鳴りつけるしつけ』が子供の心に及ぼす悪影響をしっかり共有し、改善のための意識をもつこと、雰囲気を作ることが大切です。
どうしても家庭内でうまくいかないときには、無理はしないで専門家の助けも借りてみてくださいね。